ひもを丸呑み!?〜長いひもが引き起こす、ちょっと怖い誤食の話〜

ひも状異物による猫の腸のアコーディオンサイン

⚠️ ご注意ください
この投稿には、手術中の写真や臓器・血液を含む画像が掲載されています。
医療的な内容にご関心のある方向けの投稿となっておりますので、出血や臓器の画像が苦手な方は、閲覧をお控えください。

「ひもや糸で遊ぶのが大好き」なねこちゃん、多いですよね。
でもその“遊び”が、命に関わることもあるとしたら…?

今回は、ひもを飲み込んでしまったことがきっかけで緊急手術となった猫の患者さんをご紹介します。

「急に何度も吐いている」

患者さんは、生後7か月のメインクーンの女の子。
「当日から何度も吐いている」とのことで来院されました。

食欲はあって、ご飯は食べているそう。
吐きはするけど、食べたご飯は出てこない…
少しはっきりしない症状でした。

しかし、診察と超音波検査(エコー)を行ったところ、すぐに異常が判明。
それが、腸が波打つように引きつれている「アコーディオンサイン」と呼ばれる所見です。

蛇行するように波打っている腸の上下の壁(黄色矢印)とその真ん中を通る”ひも”(赤矢印)

このサインが見られた場合、ひも状の異物が腸に絡んでいる可能性が高く、
腸の壊死や穿孔といった深刻な合併症を起こすリスクがあります。

2つの腸の管腔(黄色矢印)を引き絞るように真ん中を通過する”ひも”(赤矢印)

そのため、緊急手術となりました。

手術で見つかったのは…想像以上に長いひも!

麻酔をかけてみると、ひもはなんと…
舌の根元にも絡みついていました!

舌根部に絡みつくひも(青矢印)

⚠️以下に手術中の写真が含まれます。閲覧にはご注意ください。

さらにお腹を開けてみると…
舌の根元に絡んでいたひもは、胃、小腸、大腸までずっと連なって絡みついていたのです。

腸を傷つけないようにそっとひもを引っ張り出します。

さらに毛玉も巻き込まれており、自然に排出されることは不可能な状態。
放っておけば、腸が壊死して命に関わる事態にもなりかねません。

胃と腸を慎重に切開して、異物を少しずつ取り出しました。
その後、切開部を丁寧に縫合し、腹腔内をしっかりと洗浄して手術は無事終了しました。

術後の経過と元気な再会

術後は入院となりましたが、食欲・元気ともにすぐに回復!
翌日には無事に退院されました。

抜糸のために再来院されたときには、元気いっぱいな様子を見せてくれて、スタッフ一同もほっとしました。

飼い主さまへ:ねこちゃんのひも遊びにご注意を!

ねこちゃんは細くてひらひらしたものが大好き。
でも、遊んでいたはずのひもが命に関わることもあります。

特に、舌や胃に引っ掛かった状態で腸に長く絡みついた場合は、
腸閉塞や腸壊死といった非常に危険な状態になることも。

もし以下のような症状があれば、
「少し様子を見よう」ではなく、早めの受診をおすすめします。

  • 嘔吐を繰り返す
  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 便が出ない

久我山動物医療センターでの対応

当院では、誤飲・誤食に対して以下のような検査・治療に対応しています。

  • 超音波検査(エコー)
  • レントゲン検査
  • 消化管造影検査
  • 催吐処置(吐かせる処置)
  • 内視鏡による摘出
  • 外科手術による異物除去

異物の種類や位置によって、最適な治療法は異なります
「おかしいな」「変なものを食べたかも?」と感じたときは、
どうぞお気軽にご相談ください。

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