夏の暑い季節、わんちゃんの皮膚トラブルにお悩みではありませんか?
夏になると「皮膚がかゆそう」「赤い湿疹が増えてきた」というご相談が多くなります。
高温多湿な日本の夏は、わんちゃんの皮膚が蒸れやすく、細菌が増殖しやすい環境です。
その結果、かゆみや赤み、膿皮症(細菌による皮膚の炎症)が起こりやすくなります。
膿皮症はかゆみや不快感を伴い、放置すると悪化して広がることもあるため、早期の対応が大切です。
今回ご紹介するのは、13歳のヨーキーミックスの去勢済み男の子です。
この子は以前から皮膚トラブルを繰り返し、特に夏になると全身がベタつき、赤い湿疹が多数できてしまう状態でした。
これまで他院でかゆみ止めを複数使っていましたが、毎年のように夏になると”悪化”を繰り返していました。
診察の結果、皮脂分泌が多く蒸れやすい体質であることがわかりました。
皮脂が多いと毛穴が詰まりやすく、その中で細菌が増殖しやすくなります。
膿皮症は、感染の深さによって大きく3つに分類されます。
- 表面性膿皮症:皮膚の表面で細菌が過剰に増えている状態。外用抗菌薬や消毒で改善可能。
- 表在性膿皮症:毛穴や表皮まで感染が及ぶ状態。外用療法が第一選択ですが、改善が乏しい場合は全身抗菌薬も併用。
- 深在性膿皮症:真皮や皮下組織まで感染が広がっている状態。全身抗菌薬による長期治療が必要。
診断には細胞診が非常に重要です。
当院では、顕微鏡で炎症細胞の中に細菌が存在しているかを確認することで、感染の有無や程度を判断しています。
また、治療中にも定期的に細胞診を行い、細菌の減少や炎症の鎮静化を確認しながら治療方針を調整します。
この子の場合は、皮膚表面から毛穴周囲まで炎症が及ぶ表在性膿皮症でした。
今回の症例の顕微鏡画像。免疫細胞である”白血球”に食べられている細菌が確認されました。
当院では、薬だけに頼らず体質に合わせたスキンケアを重視し、シャンプーと消毒を組み合わせた外用療法を中心に行いました。必要に応じて短期間の内服薬も併用し、数回のケアで皮膚は見違えるほど改善しました。

2024年の最新ガイドラインでも、
- 可能な限り外用療法を優先すること
- 全身抗菌薬は必要な場合に限り、適切な期間だけ使用すること
- 治療中は定期的な細胞診で効果を評価すること
が推奨されています。
夏場にこんな症状は要注意
- 皮膚がベタつく
- 強いかゆみで掻き壊してしまう
- 赤みや湿疹を繰り返す
こうした症状がある場合は、「毎年のことだから」と放置せず、当院までご相談ください。
愛犬の快適な毎日のために、体質に合わせたケアを一緒に考えていきましょう✨