1. 混合ワクチンとは
混合ワクチンは複数のワクチンが一本の注射に含まれており、免疫力を高めるために非常に重要な役割を果たします。罹患しやすい複数の感染症を予防するために設計されており、特に免疫力が十分ではない子犬や高齢犬にとっては不可欠です。また、外に出て他の犬と接触する機会が多い場合は感染症にかかるリスクが高まるため、予防接種を通じてお互いに感染を防ぎましょう。ワクチンにより発症が完全に予防できるとは言い切れませんが、接種により重症化することを防ぐことができます。
2. 混合ワクチンの種類
混合ワクチンは、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の2種類に分けられます。コアワクチンは、すべての犬が接種するべき基本的なワクチンで、重篤な感染症から体を守るために必須です。一方、ノンコアワクチンは、地域や生活環境によってリスクが異なる病気を予防するためのワクチンで、接種すべきかどうかは獣医師と相談して決めていくことが大切です。
- コアワクチン
ジステンパー
犬アデノウイルス(2型)感染症
犬パルボウイルス感染症
- ノンコアワクチン
犬パラインフルエンザ
犬コロナウイルス感染症
犬レプトスピラ病
ワクチンは免疫に作用するお薬であり、副作用を生じる可能性もあります。不必要なワクチン接種とならないように、必要最低限の接種にとどめましょう。
3. 混合ワクチン接種のタイミングと間隔
- 初回ワクチン
生後6〜8週齢から接種を開始し、3~4週ごとに16週齢まで複数回接種を行います。複数回の接種によりウイルスに対する免疫力が定着します。
- ブースターワクチン
6ヶ月~1歳齢で1回追加接種します。この接種により、ウイルスに対する免疫力が確立されます。
- 追加接種
その後はワクチン抗体価(ウイルスに対する免疫力)が落ちてきたら追加接種を行います。コアワクチンは3年に1回、ノンコアワクチンは必要に応じて1年に1回の接種が推奨されます。
実際に抗体価を測定し、下がってきたときにはじめて打つ方法もあります。不要な接種を避ける上では最も理にかなっており、当院でも推奨しています。
- 子犬に複数回ワクチンを接種する理由
子犬は母親から受け継いだ移行抗体があり、この抗体でしばらくの間感染症から守られます。移行抗体があるうちは本人の免疫力はまだしっかりしておらず、自分で体を守ることはできません。
移行抗体は次第に減少し、このころに子犬自身が免疫を作ることができるようになります。このタイミングでワクチンを接種する必要があるのです。免疫反応ができるようになる時期には個体差があり、また移行抗体も徐々に減少していくため、複数回接種して免疫力が低くなってしまうことを防ぐことが重要です。
4. 接種後の注意点
- 健康な場合でも軽い副反応(発熱や倦怠感、元気・食欲の低下)が出ることがあります。
- 呼吸困難や重度の嘔吐があれば、すぐに獣医師に相談してください。
- アレルギー反応のリスクがあるため、接種後15分間は病院で様子を見ましょう。
- 激しい運動やシャンプーは1週間程度控えることが推奨されます。
5.ワクチン抗体価検査
- 抗体価検査とは
抗体価検査は、少量の血液で犬の免疫力を調べ、現在の抗体の有無を確認する方法です。十分な抗体が確認できれば、追加のワクチン接種は不要と判断されます。子犬の時期は免疫を高めるためにワクチン接種が重要ですが、年齢を重ねると過剰接種が健康に負担をかける可能性があります。WSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインによれば、コアワクチンは通常、数年以上持続することが多いため3年に1度の接種で十分とされています。
- 抗体価検査の注意点
一部の施設では、抗体価検査の証明書では利用できない場合がありますので、事前に確認しておくことが大切です。
本来、「ワクチンを打った証明」であるワクチン接種証明書よりも「ワクチンの効果が体に定着している証明」である抗体価検査証明書のほうが、免疫力の高さを有効に示すものですので、ご希望があれば当院から施設に確認をしたりご説明をしたりすることもできます。
6. 最後に
混合ワクチン接種は愛犬の健康を守るために欠かせない重要な予防ですが、過剰な接種は愛犬に不必要な負担をかける可能性があります。
当院では、抗体価検査を推奨しており、ワクチン接種が本当に必要かを判断することができます。外注検査となるため、結果が出るまでに1週間ほどお時間をいただいておりますが、これにより適切なタイミングで必要なワクチン接種を行うことができますので、ぜひご検討ください。