誤食
ペットが異物を口にしてしまうケースは、実はとてもよくあることです。中には「まさか、こんなものを食べるなんて…」というご相談も多く、飼い主さまにとっても予想外の出来事に戸惑われることが少なくありません。特に、若くて食欲旺盛な子や、お留守番中・お散歩中に拾い食いをしてしまう子は要注意です。
今回は、ペットが誤って飲み込んでしまいやすいものや、それによって起こりうる症状、必要な処置、そして予防策について詳しくご紹介します。
ペットが誤食しやすいもの
日常でよくあるもの
• ティッシュ・紙ナプキン・ラップ類(香りや口に入れた感触が好きな子も)
• プラスチック片、ビニール袋(おやつの匂いが残っていると要注意)
• 靴下、タオル、下着(飼い主さんの匂いがして咥えてしまいやすい)
食べ物関連
• 焼き鳥の串(骨ではなく「竹串」や「鉄串」が危険!)
• トウモロコシの芯(腸閉塞になりやすい)
• 果物の種(桃・柿・アボカドなど)
• 果物(リンゴ・梨・柿など)
• デンタルガム
中毒・重篤化しやすいもの
• チョコレート(特にビタータイプは中毒を起こしやすい)、コーヒー
• ネギ類(ねぎ、玉ねぎ、ニラ、にんにくなど。加熱していても中毒のリスクあり)
• キシリトール入りのガムやお菓子(少量でも命に関わることがあり)
• ぶどう、レーズン、アボカド、ナッツ類
• タバコ、加熱式たばこ(ニコチン中毒)
• 電池(化学反応で食道や胃に穴があくことも)
• 医薬品、人間用のサプリメント(ビタミンD、鉄剤、鎮痛薬など)
• 有毒植物(ユリ、スイセン、ヒガンバナ、ポトス、ポインセチア、チューリップ、アサガオ、ツツジなど)
誤食によって起こる症状
1. 食道の閉塞
食道に異物が詰まると食道閉塞が発生します。よく見られる原因は、歯磨きガム、焼き鳥の串、大きすぎるおもちゃ、ボール、りんごなどです。食道閉塞の症状は迅速に現れます。主な症状は以下の通りです
• 大量のよだれ
• 落ち着きなく歩き回る
• 吐き出そうとするが物が出てこない
• 呼吸困難
2. 胃の閉塞
胃に異物が入ると、初期段階では無症状のこともあります。特にコインや丸い異物は、胃の刺激が少なく症状が現れにくいです。この場合、X線検査で偶然見つかることもあります。
3. 腸の閉塞
腸の閉塞は、誤飲から時間が経過し異物が胃から腸に流れ出たのちに詰まることで発生します。特徴的な症状は、嘔吐です。
特にひも状の異物が小腸に詰まると、検査で分かりにくい上、広範囲な傷害を引き起こし非常に危険です。お腹が膨らんでいる場合は腸管の壊死や腹膜炎、敗血症が進行してきている可能性もあり、この場合は生命に関わります。
当院での対応(ケースに応じて変わります)
1. 催吐処置(薬で吐かせる)
物が胃内に残っていて、まだ成分が吸収されていない早期であれば効果的です。麻酔や手術を必要とせず、本人への負担も最小限です。ただし、食べてしまったものによっては、吐かせるべきでない物もあります。
2. 内視鏡での摘出
催吐処置は鋭い物や、喉や食道に詰まってしまいそうな物がある場合には危険を伴います。こうした場合は、体の中をカメラで見ながら異物を取り出せる「内視鏡」を使った方法が適しています。ただし、内視鏡は届く範囲に限りがあるため、異物が胃を通り過ぎて腸に入ってしまっている場合は、お腹を開いて行う手術(開腹手術)が必要になることもあります。内視鏡を使えばお腹を切らずに済むため、体への負担が少なく回復も早いというメリットがあります。
3. 手術(開腹)
催吐処置や内視鏡で異物を取り除けない場合は、開腹手術を行うことになります。異物が腸に引っかかっているとその部分の血流が悪くなりやすく、そのままにしておくと腸に穴が開くことも(腸穿孔)。こうなるとお腹の中に感染と炎症が広がる「腹膜炎」を生じ、命の危険は大きくなります。そのため腸に異物が詰まってしまった場合は、できるだけ早く手術を行い、異物を取り除く必要があります。
ご家庭でできる予防策
ゴミ箱にはふたをつける
中のゴミをあさって誤食してしまうことがあります。特にキッチンや洗面所は要注意!ドアも閉めておきましょう。
ハンカチや靴下などの持ち物はペットの手の届かない場所へ
においがついていて興味を持ちやすい物は、しっかり片付けて。
テーブルやソファに食べ物を置きっぱなしにしない
ちょっと目を離したすきに食べてしまうことも。食べ終わったらすぐ片付けを。
お留守番中はケージやサークルを活用
自由に動ける範囲を制限することで、誤食のリスクを下げられます。
拾い食いをしないようにトレーニングを
お散歩中の拾い食いも何があるかわからないため、危険です。普段から意識して、口にくわえてしまったものを離す(おやつなどと交換する)練習もしておきましょう。
何か食べてしまったかも…そんなときは
「吐かせた方が良いのか分からない」「今すぐ受診すべきか迷っている」…そんな時、まずはご相談ください
以下の情報があると対応がスムーズです
• 食べたもの、メーカー名、パッケージの写真
• 食べた時間、おおよその量
• ペットの年齢、体重、持病の有無
大切なペットが異物を誤って飲み込んでしまった場合、どのように対処すべきか判断が難しく、不安になるのは当然です。ですが、自己判断で無理に吐かせたり水を大量に飲ませたりすることは、かえって危険な結果を招くことがあります。
そんな時こそ、専門的な知識と設備を持った私たちにお任せいただければと思います。
当院では、内視鏡による異物の除去に対応した設備を完備しており、迅速で確実な処置が可能です。万が一、内視鏡での対応が難しい場合でも外科手術をはじめ適切な治療をご提供いたします。
大切なご家族を守るために私たちは全力でサポートいたしますので、どんなことでもご相談ください。